私が経験した生命保険営業のリアル:保険選びで失敗しないための3つの視点
生命保険の契約。それは「万が一の備え」という安心を買う、人生で非常に重要な買い物の一つです。
しかし、「保険は複雑でよく分からない」「本当に必要なのか?」と不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
私はかつて生命保険の営業として働いていました。厳しい目標設定の中で、保険会社や営業マンの「都合」が、お客様への提案に影響を及ぼす現実を間近で見てきました。
この記事では、元営業マンだからこそ知っている「業界のリアル」を公開します。この裏側を知ることで、不安を煽るトークに惑わされず、「あなた自身の利益」に基づいた賢い保険選びができるようになるでしょう。
失敗しないための具体的な「3つの視点」を徹底解説します。
生命保険営業の「リアル」
お客様に最適な提案をしたいと心から願う営業マンはたくさんいます。しかし、彼らは同時に、会社のシステムの中で厳しい「数字のプレッシャー」と戦っています。
数字のプレッシャーと提案のバイアス
生命保険の営業現場は、毎月の目標達成が至上命題です。評価システムは非常に厳しく、目標を達成できなければ給与や地位に直接響きます。
この構造が、時に「売りたい商品」と「お客様に必要な商品」の間に矛盾を生じさせます。例えば、手数料率の高い商品(多くの場合、貯蓄性の高い商品)は、営業マンにとって売上を確保しやすい商品です。このため、本当に必要か否かという視点よりも、「売りやすい商品」「手数料の高い商品」が優先されがちな構造があることを知っておく必要があります。
さらに、提案は「他社比較」で終わることが多く、「保険に入らないという選択肢」は検討材料にならないことがほとんどです。営業マンは、無意識的であれ意識的であれ、"不安"を煽る要素をトークに含めることで契約へ結びつけようとします。
営業マンはあなたの味方ではありますが、同時に会社の利益も背負っています。この構造を理解し、提案を客観的に判断するための視点が不可欠です。
保険選びで失敗しないための「3つの視点」
では、この構造の中で、私たちが失敗しないためにはどのような視点を持つべきでしょうか。元営業マンの経験から、本当に役立つ3つの視点をご紹介します。
視点1:保険ではなく「リスクマネジメント」から考える
保険選びの最初でほとんどの人が間違えるのが、「どの保険会社の商品を選ぶか」からスタートしてしまうことです。そうではなく、まず「どんなリスクに、いくら備えるべきか」というリスクマネジメントから逆算して考えましょう。
公的な保障を知ることから始める
私たちが加入している公的な制度(健康保険、厚生年金、遺族年金など)は、思っている以上に手厚い保障を提供しています。
病気やケガで休職した場合の傷病手当金
死亡時に遺された家族が受け取る遺族年金
高額な医療費を自己負担限度額に抑える高額療養費制度
これらの「公助」でどこまでカバーされるかを知ることで、本当に自分自身で備えるべき「自助」の額が明確になります。貯蓄で賄えるリスクは、保険でカバーする必要はありません。
視点2:「解約返戻金」の幻想を捨てる
多くの営業マンが勧める「貯蓄型」保険は、「貯金もできる」という点で魅力的に聞こえますが、その本質と効率性を理解することが重要です。
貯蓄型保険の罠と、見過ごせないメリット
貯蓄型保険は、支払った保険料から「保障のための費用」と「会社の経費」が引かれた残りが「積み立て」に回されています。
そのため、純粋な貯蓄や資産形成を目的とした商品(NISAやiDeCoなど)と比較すると、お金が増える商品としては非効率な場合が多いのです。
しかし、貯蓄型保険には預金や投資信託にはないいくつかのメリットがあります。
<貯蓄型保険の見過ごせないメリット>
計画的な貯蓄を継続しやすい
短期で解約すると元本割れするリスクが高いため、安易な引き出しを防ぎ、半ば強制的な貯蓄の仕組みとして機能します。「手元にお金があるとつい使ってしまう」「貯金がどうしても続かない」という方にとっては大きなメリットです。
契約者貸付制度が利用できる
解約せずに、解約返戻金の一定範囲内でお金を借りることができます。
生命保険料控除が受けられる
これらのメリットはありますが、保険の主たる目的はあくまで「保障」であり、「お金が増える効率」においては貯蓄専門の商品には劣ることを理解しておく必要があります。生命保険の目的は「高いリスクに低コストで備える」ことに特化し、貯蓄は別で考えるのが鉄則です。
視点3:特定の「ライフイベント」に合わせた保障額の変動を意識する
生命保険の必要保障額は、一生涯固定ではありません。私たちのライフステージに応じて、必要な保障額は大きく変動します。
独身時代: 自身の葬儀代や借金を賄えれば十分。
子育て世代: 子どもが独立するまでの生活費や教育費が必要なため、最も高い死亡保障が必要。
子ども独立後〜老後: 必要保障額は激減します。
柔軟に見直しができる商品を選ぶ
一生涯同じ保障額の終身保険に入ると、子どもが独立した後も、不要になった高額な保障のために保険料を払い続けることになり、無駄が生じやすくなります。
必要な時期だけ手厚い保障を確保できる定期保険(期間を決めて加入する保険)をメインに活用するなど、「柔軟に見直しができること」を前提とした契約を心がけましょう。
まとめとメッセージ
私が営業の現場で学んだ最も大切なことは、保険は「安心」を買うものであって、「不安」から逃れるために契約するものではないということです。
改めて、賢い保険選びのための3つの視点を確認しましょう。
保険ではなく「リスクマネジメント」から考える
「解約返戻金」の幻想を捨てる(ただし、貯蓄が苦手なら活用も視野に入れる)
特定の「ライフイベント」に合わせた保障額の変動を意識する
もし今、保険の提案を受けているなら、この記事の視点をもって「なぜその保険が必要なのか?」「なぜその保障額なのか?」を深く掘り下げて質問してみてください。その答えに明確に納得できるかどうかで、その提案が本当にあなたのためになっているか判断できます。
そして、一つの提案で決断せず、ぜひ「セカンドオピニオン」を取ることを強くお勧めします。 もし、提案内容について「本当にこれでいいのかな?」と少しでも迷いを感じたら、お気軽にご相談ください。元営業マンとして、しがらみなく、あなたの立場に立ってアドバイスをさせていただきます。
心からあなたにとって本当に必要な安心を手に入れてほしいと願っています。
